どうも、Leoです。
今回は、薬学部への進学を考えている方々にチェックしてほしい内容をいくつか紹介していきます。
この記事でご理解いただけるポイントは、以下の4つです。
- 薬学部の選び方
- 志望校を選ぶとき、意外に見落としがちなポイント・盲点
- 国公立大学・私立大学の薬学部の、国家試験に関わる相違点
- 各大学の薬学部の国家試験合格率の正しい見方・着眼点
すべて、国立大学の薬学部に進学した私が実際に感じたポイントであり、自分なりに調査を行って得られた知見をもとに紹介しています。
目次
薬学部の選び方
今回の本題に入る前に、私のおすすめ記事を紹介しておこうと思います。
薬学部への進学を考えている人でも、例えば以下のように悩んでいるという方もいると思います。
- 薬学部をどうやって選んだらいいの?
- 偏差値もそうだけど、それ以外で進学先の判断基準が今ひとつわからない…
ということで、高校生が進路選択をする際の手助けになるような記事を紹介しておきます。
以下の記事では、志望校を選択するとき、実際にチェックしておくべき判断項目について、主に国公立大学薬学部にスポットを当てて解説しています。


盲点1:国家試験合格率のからくり
大学の偏差値は、もちろん高いに越したことはないのですが、もう1つ確認していただきたい点は、その大学の薬学部における薬剤師国家試験の合格率実績についてです。
各大学のホームページや、厚労省のホームページでは、毎年、各大学の薬剤師国家試験の合格率を掲載していることが多いです。
しかし、進学先を決定する上で、特に見ていただきたいのは以下の3点です。
- その薬学部における、毎年の入学者定員
- 毎年の薬剤師国家試験の受験者数
- 薬剤師国家試験の合格者数
これらの値が調べられたら、
国家試験の受験者数を入学者定員で割って、正味の合格率を算出してみてください。
すると、その値が大学の公表している合格率と乖離している場合があることを、実感できると思います。
実はこれについての種明かしをすると、以下のような行われている可能性があるということです。
大学側が公開している薬剤師国家試験の合格率の算出では、
- 受験者らが大学に入学した年度の入学者数や、6年生まで進級した学生の全体数は、分母にしていない。
- 合格が見込まれる学生のみ、国家試験を受験させ、その受験者数を分母にすることで、合格率を高く魅せている可能性がある。
ということです。
各大学のからくり
では、どうしてこのようなことが起こるのか、その仕組みとしては、具体的に以下の3つが考えられると思います。
- 学部内での成績が良くない学生を留年させる仕組みにより、優秀な学生のみを進学できるようにしている。
- 大学ごとに卒業試験などを実施して、国家試験の合格が難しいと想定される学力の学生は、国家試験を受験させないようにする。
- 毎年発表する国家試験の合格率は、入学定員を分母にせず、国家試験を実際に受験した人数を分母にして算出している。
以上のような3つの施策により、見かけ上は国家試験の合格率を高くして公表することができます。
そして、この傾向は、特に私立大学に見られます。

実際の例
先ほど紹介したことが、実際に行われているのかどうかを示すために、ある資料を用意しました。
以下のグラフを御覧ください。
こちらは、各大学の薬学部ごとに、直近の薬剤師国家試験合格率を調べ、これを高い大学から順に並べたものです。
ここで示す合格率は、先程示したように国家試験合格率を入学定員で割って求めた、正味の合格率(入学定員ベースの合格率)を示したグラフです。
れぱのん@薬剤師(元人事)という方のTwitter投稿から引用させていただきました。
このグラフを、よーく覚えておいてください。
そして次に示すのが、各大学が国家試験合格率として公に発表しているものです。
1つ目のグラフより合格率が上昇している部分は、オレンジ色で上乗せしています。
これを見ると、以下の3点を読み取ることができます。
- 殆どの大学において、公表されている合格率が入学定員ベースの合格率と比べて高く算出されていること
- 入学定員ベースの合格率が低い大学ほど、その差も大きいこと
- この傾向が私立大学の薬学部に特に多いこと
どうして高く魅せる必要があるのか?
確かに、数%の差であれば、ただの誤差として納得することができます。一方、30%~50%といった差になっってくると、合格率を意図的に操作していると考えるのが妥当です。
では、どうして各大学がこうした方法をとるのでしょうか。
これはひとえに、大学側がより優秀な実績を公表したいから、そして、より受験生・社会からの評判・人気を獲得したいからだと考えられます。
特に私立大学は、大学を円滑に経営していく上でも、大学のネームバリューや、それに伴う受験者の獲得が重要になってきます。
くどいようですが、、こういった手法の善悪については議論しません。
ポイント1:国家試験合格率は、正しく見よう
ご覧いただいたように、国家試験合格率には表面的な数字だけではわからないポイントが結構あります。
- 国家試験合格者数÷国家試験受験者数
- 国家試験合格者数÷入学者定員(入学者数)
これら2つの値を比較すること、これも一つの観点として、是非とも覚えておいてください。
盲点2:国公立大学と私立大学の意外な違い
続いては、進学先や学科を決める上でも知っておくべき、国公立大学と私立大学の薬学部の違いについて説明していきます。
国公立大学、私立大学の違い
比較のために、とりあえず国公立大学の薬学部の特徴についてまとめておきます。
- 薬学部を問わず、私立大学と比べると一般的に入学定員が少ない傾向が見られる。
- そのため、教員一人あたりに占める、学生の数が国公立大学のほうが少ない。
- 学費が安いものの、国からの予算により研究費や設備費には余裕がある。
- よって、国公立大学のほうが、研究の設備や指導環境が整っているという考え方もある。
これを見ると、例えば以下のように思った方もいるのではないでしょうか?
そうか! 国公立大学のほうが充実した研究設備や手厚い指導を受ける環境が整っているなら、薬剤師国家試験への対策も手厚いってことか!?
しかし、この問いへの答えとしては、NO!である可能性が高いです。また、大学によっても違いがあり、一概にそうとも言い切れません。
これを説明するために、国公立大学と私立大学の特色について今一度まとめておきましょう。
国公立大学の特色
大学は一種の教育機関であると同時に、研究機関であることは忘れてはいけません。とくに、国公立大学の場合は、研究力を一つの売りにしているという側面もあるのです。
さらに、薬学部の全入学定員のうち、4年制の定員が占める割合は、国公立大学のほうが高い傾向があります。4年制の学科に通う学生は卒業後も大学院に進学しやすく、研究を通して薬学に携わることが主なのです。
以上2つの理由から、6年制・4年制を問わず、国公立大学の学生は、研究志向が比較的強い印象です。
そのため、6年制とはいえ、国家試験対策が私立大学の学生と比べてスロースタートになる可能性が高いとされているのです。
これらの特徴をまとめると、以下のようになります。
- 国家試験対策のための勉強というより、大学の講義・実習・研究がメインに扱われやすい。
- 研究を主流とする4年制の定員割合は、国公立大学のほうが高い傾向があるので、尚更その傾向が強い。
- その分、国公立大学の学生は、大学や予備校の講義を利用するというより、自分たちで国家試験対策を行う傾向も強い。
- むしろ、大学側が国家試験に対して手厚いサポートをしてくれる保証もないので、自分たちでの対策が必須になる。
私立大学の場合
これに対して、私立大学の場合はまた違った傾向が見られます。
- 国家試験対策を兼ねたカリキュラムが、入学時点から卒業までの間に組まれていることが多い。
- 普段の講義においても、国家試験を意識した形がとられやすい傾向がある。
- 進級テスト、卒業試験など、在学中の要所には成績がある程度良い学生のみを通過させる制度が用意されている。
- これらの制度により、国家試験に合格する見込みのある学生を進級、卒業させる。
国公立大学の学生が優秀?
ここまで読まれた皆さん、こう思いませんでした?
- 国家試験の対策という観点で見れば、独学での対策が重要な国公立大学の学生は、大学や予備校を頼りやすい私立大学の学生と比べて大変そう…
- とはいえ、国公立大学の薬学部は、国家試験合格率が軒並み高い傾向がある…
- 国公立の方が、いろいろ苦労しそうなのに、実績が平均的に高いのはなんで?
私も、国公立と私立の合格率の違いを知ったときは、この疑問がわきました。
しかし、これはひとえに、「国公立大学の入学者のほうが、勉学に対しては真面目で勤勉であるという傾向が強い」という理由が考えられます。
入試制度や偏差値の面から考えても、国公立大学の薬学生が平均的に優秀というのは、概ね理解しやすいはずです。

もちろん他の要因も考えられますが、これはあくまで傾向の話です。
ポイント2:国公立と私立の違いを正しく理解しよう。
ここまで紹介してきた内容を、ざっくりまとめると、結局は以下のようなことです。
薬剤師国家試験の対策や、合格率に関しては、国公立と私立で状況がかなり異なる。
- 国公立大学:研究という理念も強く、国家試験対策は自力での対策もかなり重要!
- 私立大学 :国家試験に対しての対策が、比較的手厚い。
盲点3:大学ごとの学生の進路状況や志向、傾向
3つ目に考えなければいけない点、それは、その大学薬学部ごとの進路状況、傾向といったものです。具体的には、
- 6年制の学科の中で、薬剤師としての就職を志望している人の割合はどのくらいか?
- 薬剤師になっても、製薬企業などに就職する人の割合はどのくらいか?
- 大学院への進学率は、どうなっているか?
特に、4年制の学科を志望している方であれば、その薬学部の大学院進学率については知っておくべきですし、6年制学科の卒業生が就職する職種の傾向というのも、大学によって変わってきます。

必ずしも、国家試験合格率と偏差値は相関しない!
薬学部のある大学への進学を考える際に、ぜひとも知っておいてほしいことがあります。それは、
「偏差値の高い大学の薬学部=国家試験の合格率が高い」 という考えは正しいとは限らない!
ここでは例として、日本で最高の偏差値を誇る東京大学、京都大学の薬学部の国家試験合格率を覗いてみましょう。
- 東京大学:53%(受験者17人中9人合格)
- 京都大学:82%(受験者34人中28人合格)
薬学部へ行こう!より引用
東大や京大でも、実はそこまで合格率が高くないことは、ご理解できるかと思います。実際、これらの合格率より高い合格率を誇る大学は、国公立・私立ともに結構存在します。
「東大や京大の学生なら、国家試験の合格率も100%付近だと思っていた…」
そういった人もいるのではないでしょうか。
では、どうしてこうした事が起こるのでしょうか?理由としては、例えば以下のようなことが考えられます。
進路選択に関する要因(これがほとんど)
- 将来は、薬剤師としてというより、研究に携わるという考えの学生が多いから。
- 薬剤師になる必要がなく、6年制の学科でも国家試験を受験しない学生がいるから。
国家試験対策に関する環境的な要因
- 受験者数が少ないから、情報・ノウハウが得にくい。
- 受験者数が少ないから、モチベーションの維持が難しい。
- 大学側が、国家試験を見据えた講義や対策を行いにくい。
- そのため、国家試験対策は、基本的に自分たちで独自に行う必要がある。
もちろん、こういった特色は大学ごとに違いがあります。
一般的に偏差値が高い傾向がある国公立大学ですが、合格率が90%を切らないようなかなり優秀な大学も存在しますし、毎年の受験者数や難易度によっても変化があります。
ポイント3:偏差値だけではなく、大学の特色や学生の進路に注目!
それでは、この項目についての簡単なまとめです。
- 一概に、偏差値の順番で国家試験の合格率が高いわけではない
- 進学を希望する大学の薬学部ごとに、その特色を調べてみる
- その大学の薬学生が、将来どういった業界、職種で働いているのかに注意する
まとめ
今回は、薬学部の選び方、国公立と私立の違い、国家試験合格率の正しい見方について解説してきました。
最後に、今回説明させていただいた内容を簡潔にまとめて締めくくりたいと思います。
国家試験合格率のからくり
- 志望する薬学部の国家試験合格率が高いからといって、その薬学部の在学者全体が優秀とは限らない。
- 優秀な学生のみが、高い合格率に貢献しているだけかもしれない。
国公立と私立での意外な違い
- 国公立大学に進学するなら、国家試験対策には自分なりのしっかりとした責任を持とう。
- 私立大学では、国家試験の合格率が大学の評判にも影響しうるので、国家試験対策が国公立大学と比べ、手厚い傾向にある。
大学ごとの学生の進路状況や志向、傾向
- 偏差値の高い大学ほど国家試験合格率が高いとは限らない
- 国公立・私立の違いや偏差値によって、学生の進路状況に差が生じる
繰り返しますが、大学によって差がありますから、今回の情報が例外なく正しいと言い切ることはできません。あくまでも、全体的な傾向をもとにした一般論だと考えてください。
進路選択の参考にしていただけると有り難いです。
最後までお読みいただいて、ありがとうございました。