今回は、実際に薬学部に通いつつ研究室に所属している自分の視点から、実体験をもとに、薬学部で英語が必要になる場面、そしてこれから薬学部の学生、薬剤師が英語とどう向き合っていくべきかについて、出来る限りわかりやすく紹介していきます。
とくに今回の記事は、以下のような意識をお持ちの方に読んでいただきたいと思います。
- 「理系に入学したから、何となく英語力は気にする必要はなくて済むかな?」
- 「中学、高校、大学と、自分の英語には苦手な意識があるかも…」
今回の内容はすべて、この記事をお読みいただくことによって、薬学部の学生であろうと、薬剤師であろうと、英語学習に対する意欲と関心を深めていただくことを目的としています。
ですので、何か一つでも、皆さんのモチベーションを高めるための「きっかけ」となれる内容があれば幸いです。
目次
薬学部にいながら、英語が必要になる場面
ここで紹介している内容が当てはまらないという方も、もちろん多くいらっしゃることでしょうから、一つの参考としていただけるとありがたいです。
まずはじめに、薬学部に所属していて、英語の能力がとくに必要になってくるであろう場面について紹介します。
論文を読むとき
英語が必要になる場面の1つ目は、研究室に配属されてからの学術論文を読むときです。
多くの場合は、学部4年生になると、学生のひとりひとりが大学内の各研究室に配属されることになります。大学によっては、希望者や成績が優秀な方だけが配属されることになるという場合もありますので、全員に当てはまる内容では無いかもしれません。
研究室に配属されてからは、ほとんどの人が遅かれ早かれ、自分自身の研究テーマを設定した上で、研究に着手することになりますが、このときに日本のみならず、世界中の「学術論文」を読む機会がかなり増えます。
学術論文というのは、日本人の研究者が日本向けに研究発表を行う際には日本語で書かれることになりますが、本格的な研究内容、大学・研究機関になればなるほど、海外の論文雑誌に英語の記事を投稿することになります。
また、学生によっては実際に論文を執筆したり、英語で自分の研究成果を発表するという場面に出くわすことになるかも知れません。これに関しては、後ほどでも少し紹介しています。
現代では、翻訳ソフトによる翻訳の精度がものすごい勢いで進歩しているため、これを使えば、英語に触れる労力に関して妥協できるかもしれませんが、英語論文を少しずつ読んだり、自分の意見を英語で話せるという能力は、長期的な目で見たときに、若い間に養っておくことが先決です。
大学院進学のとき
これは特に、4年制の学科に進学しようとしている方に当てはまる内容です。薬学部で4年制の学科に通われている方は、多くの場合はそのまま大学院に進学することになります。
大学院に進学するとなると、先ほどのように論文を読むという機会も圧倒的に多くなってくるでしょうし、人によっては英語での発表をするという場面を経験することになるかもしれません。
特に英語の発表の際には、より実践的な英語力(英会話力)が必要とされますし、実際の受け答えにも答えられるようなコミュニケーション能力も必要になってくることは間違いありません。
また、そもそも大学院に入学するとなれば、多くの大学においては英語の資格試験のスコア提出が必要になってきます。主に、TOEICとTOEFLを課している大学が多いと思いますが、大学院への進学を希望している場合は、前もってこうした対策をあらかじめ立てて置くことが必要になってきます。
就職活動のとき
役に立つ場面の続いては、とにかく就職活動での自分の武器になるという点です。
例えば、英語の資格試験に関する高いスコアが獲得できていると、それが自分のアピールポイントにもなりますし、履歴書やESでの評価も向上することは間違いありません。
これは、何より自分の進路選択や、キャリアパスの幅を広げてくれる可能性を大いに秘めているものですから、できるだけ若い間に準備を進めておくことが特に重要になってきます。
学内外でのコミュニケーションのとき
これに関しては、上の3つと比べると特殊な例ですので、当てはまるという方は少ないかも知れませんが、
- 大学の長期休業中を狙って、海外に短期留学したり、旅行に行く場合
- 学会などでプレゼン発表を行う場合
- 所属研究している研究室内に、英語圏の留学生がいる場合
これからの薬学部・薬剤師と英語について
薬剤師になるというだけであれば、たしかに英語が得意ではなくたって、寧ろ苦手意識があったところで、そこまで大きな障壁があるとは考えられません。
しかし、薬学部に通ってる or 通おうとしている方々に向けては、間違いなく英語を武器にしておくことをおすすめしたいと思います。これ以降の内容に関しては、少し自分の主観も混じってしまいますが、英語を勉強したいという願望がある方であれば、ぜひ読んでいただきたいです。
薬学部の学生や、これから薬剤師になられる方々に向けて、英語学習をおすすめする理由について、以下の3点に絞ってご紹介します。
国家試験での、とある兆し
実は日本にある多くの薬学部でも、薬剤師国家試験を見据えつつ、英語に関する素養の重要性が示唆されるようになってきました。
その証拠がこれです。2021年に行われた「第106回薬剤師国家試験」において、以下のような問題が必須問題において出題されました。
なんと、「日本語で書かれた資料に対して、適当とされる英語の題名を選びなさい」という、大学入試や英語の資格試験でも出題されそうな問題が出題されたのです。
「たかが1問…」っと言われてしまえば、結局それまでなのかもしれません。
しかし、少し気になることがあるとすれば、「複数問を出題するようなことはせず、どうしてわざわざ1問だけ英語の問題を出題したのか?」ということでしょうか?
これは私の意見ですが、これが1つの作問者の意図であるとも解釈できます。
すなわち、第106回以降に受験するのであれば、英語の問題が出題されるということを想定しておいてほしいという、作問者側からの要請であるとも捉えられると考えられる訳です。
どうして英語の出題を想定してほしいのかについては、詳しいことはわかりませんが、例えばこういった意図が裏に隠れているかもしれません。
- グローバル化の流れで、日本人以外の患者、日本語以外の情報にも対応できるようにするためか?
- 英語教育を重視する傾向が強まってきたという、大学の方針に基づいてか?
予想される理由はいくつか考えられますが、今後もこうした傾向は強まっていくということは、心積もりをしておくべきでしょう。
情報へのアクセス
2つ目の理由は、最新の情報へのアクセス量、アクセススピードが圧倒的に向上するという理由です。
特に、薬学や医学の分野であれば、例えば以下に挙げるような情報を知ることが重要になってきます。
- 医薬品の作用・副作用・安全性などに関する臨床研究
- 身体の臓器や組織、疾患に関する新たな知見
- 細胞生物学、生理学、免疫学などの基礎医学をはじめ、薬学部でも学習するような学問の基礎研究
これらに関する情報は、ほとんどが英語の論文として発表された後、その後にネット記事や、国際ニュース、書籍、専門雑誌などを通して、日本語に翻訳される事により、私たちのもとに届きます。
高度にグローバル化が進んでいる現代とはいえ、どうしてもこのような「生の英語情報→日本語圏の情報」というステップを挟むことになってしまいます。
これ自体はさほど問題ないのですが、問題はその情報量の差です。日本語でアクセスできる情報量に比べると、英語圏で得られる情報には、桁がいくつか違うくらいの差があり、どうしても窮屈になります。
幸いなことに、日本の場合は書籍やニュース記事などのクオリティーが非常に高いとされていて、私たちにとっては不自由内容に思えますが、それでも日本語を介して入手できる情報には限度があります。
より最先端の内容を、より迅速に、より正確に、より大量に、より快適に入手するためには、英語を習得するという選択肢は、絶対に外せません。
個性を磨く
英語を習得していくこと、そして自分の英語にも自身を持つということは、同時に自分の個性を磨くことになりますし、自分自身を彩る長所や才能にもなります。
最近ではとにかく、「自分が社会の一員である」という認識に加えて、個人としての存在「個性」・「人格」などについて、深く向き合っていく必要があるとも言われる時代になってきました。
だれもが、自分の個性や特長、適性などに関心を寄せるようになり、その傾向は一昔前と比べて格段に増えています。
その要因としては、色々考えられますね。
- 終身雇用制度が失われつつあること
- 副業・転職が当たり前になりつつあること
- 個人として、簡単に情報発信ができるようになったこと
- それと同時に、個人が影響力を持つことができるようになったこと
- 日本人の平均寿命が延長し続けてきたこと など
誰もが「自分とは何たるや?」っと、問い質す時代になりつつあるからこそ、そこで役に立つ考え方の1つに、「個性は足し算・掛け算で考える」というものがあります。
これはつまり、「〇〇」&「〇〇」といったような、いわゆる「ハイブリッド」・「マルチ」タイプの個性を見つけ、磨いていくことです。
例えば、私やこの記事をお読みのあなたのように、薬学生・薬剤師としての立場も個性の一つになりますし、さらにそこに英語力が重なることで、「薬学」&「英語」という個性が誕生します。
「薬学」や「英語」が単独だけであれば、そこを個性や長所としている方は沢山いらっしゃることでしょうが、これらを同時に持ち合わせているとなると、その人数は一気に限定的になります。
これはつまり、自分の希少性が高まるという意味にも捉えることが出来ることでしょう。

さらに、自分をさらに成長させる原動力、きっかけを作ったりすることが出来るようになるわけです。
まとめ
今回の内容を通して、薬学部に所属していながら、薬剤師でありながら、英語を学ぶことの意義についての理解が、少しでも深まったのなら幸いです。
最後に、今回紹介した内容に関連して、英語の勉強に少しは興味があるという方にも合わせて読んでいただきたい記事をご紹介します。
