薬学部に数学3は必要? 現役の薬学生が「薬学部での数学事情」について解説してみた。

薬学部に入学しようとしている高校生や、数学に苦手意識がある方にとっては、薬学部で勉強を進めていく上で、数学に関する事情が気になってしまいます。

  • 「理系の進路選択をした高校生が勉強する「数学3」は、薬学部で必要か?」
  • 「そもそも、薬学部に入ってからは、数学が必要なのか?」

というわけで今回は、これら「薬学部の数学事情」に関して、現役の薬学生の視点から詳しく語っていきます。

現役で薬学部に通う学生の視点から、「数学で重要なのかどうか?」・「重要だとすれば、どういった内容を学習するのかどうか?」などに関して、できるだけわかりやすく紹介していきます。

 

そもそも、薬学部に数学は必要なのか?

先に結論から申し上げた方が良いと思いましたので、この記事での結論を先にお伝えしておきます。

薬学部に実際に入学したことがない方にとっては、そもそも「薬学」と「数学」という学問自体が、かなり距離があるものに思えるかもしれませんが、

実際に、薬学部に入ってからも数学は大変重要です。

これに関しては、主に以下のような理由が挙げられます。

薬学部に数学が必要な理由
  • 国公立・私立大学を問わず、薬学部の大学入試においては、数学という試験科目が必ずと言って良いほど設定されているから
  • 在学生、卒業生ともに、その重要性は認めているから(主観を含む)
  • 薬学部の入学後も、基礎的な数学を学習する科目が設定されているから
  • 薬学の専門科目の中でも、数学の知識が必要になる場面や科目は、意外にも結構あるから
  • 薬学部で研究をしたり、国家試験を受ける際に、数学の知識が必要になるから

 

1つ目の「入試科目になっている」という内容に関して、少し説明を付け加えておきます。

大学側が受験生に数学の能力を試験しているということは、「数学的な能力、思考力が受験生を入学させたい」からであると考えることもできます。

あるいは、「入学後にも数学の知識が必要になるから、高校までの数学はしっかり勉強しておいてほしい」という大学側の要求として捉えることも出来るかもしれません。

Leo
Leo
受験科目が少なくて良い私立大学でも、多くの大学では数学を必須科目として設定しているくらいですから、それだけ数学という科目の重要性が現れていると考えられます。

 

薬学部に入学してからの数学事情

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  • 「数学3を勉強せずに入学したけど、大丈夫?」
  • 「高校でも数学が少し苦手なままで入学したけど、大丈夫?」

先ほど紹介したように、薬学部の入学試験の中には、数学3が出題範囲に入っていないという大学もあります。高校でも履修していないという方もいるはずです。

その上で、薬学部で勉強をしていくにあたって、数学という科目は必要になってくると、先に結論をお伝えしました。

しかし、心配は要りません。

ということでここからは、薬学部での数学事情について、出来るだけ噛み砕いて説明していきます。

復習する科目がある

薬学部に入学すると、数学3で勉強する基本的な計算を新しく勉強する or 復習するという科目があります。これは、ほぼ全ての薬学部において言えることです。

私立大学の場合は特にそうですが、高校までの基礎的な数学の内容について復習するという科目を設けているという傾向が強いです。これはもちろん、数学3が入試で出題されないという傾向は、私立大学のほうが国公立大学と比べて高いことも関係していると考えられます。

ですので、もし「今まで数学3以上の微積分を勉強していない or 自信が無い」という人であっても、大学ではそこまで大きな差は生まれません。

その上で、高校では学習しないような、少し専門的な数学の知識を学習する科目を設けているという大学もあります。こちらは、偏差値が高い大学、国公立大学のような総合大学にこそ、そういったカリキュラムを定めているという傾向が強く見られ、大学での教養として数学を学ぶという側面も強いと考えられます。

これに関して、以下では薬学部で学習する数学の内容について取り上げていますのでそちらも御覧ください。

 

計算力は大きく必要ないが…

薬学部では、先ほど言ったように高校までの内容をおさらいすることのできる数学の科目があります。

もちろん、その科目を履修して、単位を修得できるくらいの計算力は必要になりますが、大学受験ほどに気を詰める必要はありませんし、そこまでの素早く、正確な計算力は必要になる訳ではありません。

確かに、薬学部で勉強する科目の中には、例えば微分積分、指数・対数関数などが絡んでくる科目もいくつかあります。(これについては、後ほど少し解説します。)

とはいえ、そういった専門的な科目を勉強するにあたっては、自分たちがゴリゴリ計算を行うという場面は多くありませんし、どちらかというと、得られた計算結果、公式が重要なことが多いです。

 

ただし、だからといって数学の勉強そのものを蔑ろにできるものでもありません。その分大事なことを挙げるとすれば、これに集約されると思います。

「数学上の重要な原理、概念などは、少なくとも勉強した内容まで理解しておくこと」・「数学的に考えるチカラを養っておくこと」

例えば、数学3以上で勉強する内容の中でも、薬学部の勉強でもしばしば目にする概念として、以下のようなものが挙げられます。

薬学部で知っておくべき数学上の概念など
  • 自然対数、ネイピア数e
  • 三角関数・指数関数・対数関数の微積分
  • 変数分離型をはじめ、基本的な微分方程式の解き方
  • 多変数関数の偏微分

これらの内容は、実際に薬学部で専門科目を学習していると、絶対に目にする概念・重要事項です。後ほど、どういった科目で出くわすことになるかを簡単に紹介します。

 

薬学部で勉強する数学

薬学部に入学してから勉強する「数学の科目」を紹介していきます。要は、これから専門的な薬学の知識を勉強する上で、重要になってくる数学の内容を勉強するための科目です。

ここで紹介する数学の科目は、薬学部の入学後~1年生の終わり にかけて学習する内容だと考えて下さい。

全大学の薬学部のカリキュラムを調べ尽くしたわけでは決してありませんので、大学によって違いがあることは免れません。しかし、概ねどの大学の薬学部にも当てはまるカリキュラムですので、一つの参考にして下さい。

 

解析学

まず紹介するのは、解析学です。この言い方だとやや難しく聞こえますが、いわゆる「微分積分」・「極限」に関する内容を学習する科目だと考えて下さい。

理学部や工学部の解析学とは異なり、盤石に基礎固めをして、さらに高度な数学を学んでいくようなことは、薬学部のカリキュラムではありません。あくまでも、薬学を学ぶ上で必要になる計算力や、微積分が絡んでくるような数式を学んだりする際に差し支えない程度の能を養います。

ですので、勉強する内容のレベルとしては、数学2・3の基礎~数学3の発展、理系大学生の教養程度 くらいです。

具体的に扱う内容としては、数学3の微積分、極限計算、偏微分、微分方程式などです。

 

線形代数学(※やや発展)

かつて、旧課程の学習指導要領において「数学C」に分類されていた科目であり、いわゆる「行列」という概念について詳しく勉強します。

薬学部の専門的な科目では、ここで習うような内容が必要になるという場面はほぼ有りません。一部、物理系の科目においては、薬学部のカリキュラムよりもやや発展的な内容において、少し必要になる場面があるくらいです。

ですので、理学系や工学系の学部のように、物理化学・量子化学などをより専門的に勉強するという以外であれば、詳しく勉強する必要もない科目ということになります。

Leo
Leo
こういう理由もあってか、そもそも線形代数学については勉強しないという大学の薬学部もあります。特に単科大学(薬科大学)には多い印象です。

この科目に関しては、特に高校までの数学3の知識が必要になるというわけでもないため、数学3を履修している、していないに関わらず、カリキュラムにある人は誰しもが、同じように勉強する必要があります。

 

統計学

科学の研究、特に薬学や医学の研究においては、統計という学問は大変重要視されています。

統計に関する問題は、なんと最近の薬剤師国家試験にも出題されるほどです。第106回薬剤師国家試験においては、仮説検定法に関する問題が出題されていましたが、こういった勉強をしていないと解けない問題です。

ですので、4年制の学科で研究を志している人も、6年制の学科で薬剤師を目指している人も、どちらにせよ勉強しておいた方が、先々で役に立つ考え方が多くある分野でもあります。

 

薬学部で数学が必要になる科目

薬学部で勉強する専門科目の中で、ここまでに紹介してきたような数学的概念が登場する場面を、科目別に紹介していきます。

先ほど紹介した数学を学習するための科目とは異なり、これ以降で紹介するのはすべて、日本の薬学部におけるコアカリキュラムに基づく科目と、その学習内容です。

ですので、6年制の学生はもちろん、4年制の学生も勉強する内容を多く含んでいます。

 

物理分野(物理系科目)

物理化学

薬学部で学習する科目の中で、もっとも数学が重要になる科目です。簡単に言ってしまうと、高校物理で言うところの、熱力学・原子物理の分野の延長にある科目だと考えてもらえればよいかと思います。

学問的にも基礎的な内容であって、「物理化学」という名前が示すとおり、物理学や化学がとても重要になってくる科目ですから、それだけ数学が必要になってきます。

Leo
Leo
そしてその分、薬学部に入学してから1~2年生の間に学習するという場合が多く、数学が苦手で入学した学生からすると、ここが最初にして最大の関門かもしれませんね…

数学3で習うような、様々な関数の微積分に加えて、微分方程式を解いたり、多変数関数を偏微分により計算したりといった、かなり専門的な数学をバリバリ使うという印象です。

より専門的な内容を学習する場合によっては、線形代数に関する知識もここで生きてくることになります。

専門的には、量子力学・量子化学・化学熱力学・統計力学などの分野に関して学習するのが、薬学における「物理分野」の科目です。

分析化学

「分析」という名がついている通り、様々な分析機器を使ったり、実験を行うことで、化学物質の正体、性質などをあきらかにするための方法・原理・技術などを学習する学問です。

この科目で必要になってくる数学的な内容の例としては、指数・対数関数の計算に加えて、一部には微積分の知識などがあります。

それと同時に、ここでも実は、数学に加えて、高校までの物理学・化学が、滅茶苦茶重要になってきます。

 

生物分野(生物系科目)

生化学

「生化学」を簡単な言い方をすれば、ヒトの体内や細胞など、生体内で起こる化学反応・代謝反応などについて学習したりする科目です。

生体内で起こる化学反応をより理論的に捉えるために、高校で習ったような反応速度論をもととした内容を学習するという場面があります。

ですので、ミカエリスメンテンの式などが基礎になっていて、高校の化学で学習する内容が一部に含まれます。

 

 

薬剤分野

薬物動態

「薬物動態」という学問は、ヒトに薬物を投与した際に、どういった流れで薬物が吸収されたり、全身をまわって作用したり、最終的に体外に排出されるかを、科学的に捉える学問です。

ここでも実は、数学的な知識を総動員して、動態のメカニズムを理解していきます。

具体的なその例としては、例えば以下のようなイメージです。

  • 投与された薬物は、どういった速度で吸収されるか?
  • 血中に直接投与するのと、口から投与して胃や腸から吸収されるのとでは、どう違うのか?
  • 投与された薬物の化学変化・構造変化(代謝)が、体内でどのように進行するのか?

 

まとめ

最後に、今回お話した内容を簡単にまとめておきます。

薬学部の数学事情
  • 薬学部には数学は必要か? ▶ 必要!
  • 1年生のカリキュラムには、必要な数学を勉強するための科目がある!
  • 専門科目には、微積分をはじめ、数学的知識が必要な科目が意外と多い!
  • 研究をしたり、国家試験を受ける上でも、ある程度の能力が必要!

受験勉強並みの計算力や、思考力が必要ということはありませんが、少なくとも微積分の概念を理解したり、教科書で与えられている数式の意味がわかるくらいを目指しましょう。

それさえクリアできていれば、薬学部にいながら数学の能力について心配する必要はありません。

 

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