ブログをお読みいただいてありがとうございます。
今回は、神経科学の教科書をご紹介していきたいと思います。
この記事を書いている私は、とある大学の薬学部で神経科学を専門的に研究している研究室に所属しており、実際に研究や論文チェックを行っていたりします。今回は、そんな学生である自分の視点から、神経科学を勉強する上で「これは役に立ちました!」という本をひたすら紹介していきます。
今回の記事で想定しているターゲットは、以下のような方です。
- 大学で脳科学・神経科学・心理学などを勉強したいと考えている中学生や高校生
- 大学でこうした分野を専攻している、もしくは研究している大学生・大学院生
- こうした分野の専門でなくても「脳科学」・「ライフサイエンス」っといった分野に興味がある方、ワクワクを感じられる方
それでは、紹介を始めていきます。各ECサイトへの購入リンクも添付してありますので、気軽にチェックして見てください。
目次
一般書(中学生・高校生・一般向け)
最初にご紹介する
進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線 (ブルーバックス)
1冊目に紹介する本書は、おそらく脳科学について詳しく知らないという方の中でも、もしかしたらタイトルを見聞きしたことがあるかもしれません。それくらい有名な本なんです。
著者は、東大で研究室を主宰されている池谷裕二先生です。脳科学、神経科学の分野で言えば、茂木健一郎先生、中野信子先生などと並んで、日本でも本当に著名な研究者の方です。
2007年の発売以来、ずっと売れ続けて入れる一冊で、脳科学を中高生に対してもわかりやすい語り口で解説されているのが特長です。一般向けの本を出版されている池谷先生だからこそ、脳科学へのワクワク、謎めいた魅力などを、とにかく分かりやすく紹介されていますので、誰でも楽しめる内容になっていることは間違いありません。
ニュートン式 超図解 最強に面白い!! 脳 (ニュートン式超図解 最強に面白い!!)
「中田敦彦のYouTube大学」でおなじみのオリラジ中田さんが、脳科学に関する解説動画を投稿されていますが、実はその動画内で紹介されている参考図書が、本書なのです。
この記事を読まれているあなたも、今まさに、自分の頭の中で起きていることについて、少しは思いを巡らせる機会を与えてくれる一冊となるはずです。
とはいえ、この記事を読まれている方のことですから、きっと、
- 本書だけでは物足りない…
- もっと深い内容、多少専門的な内容までを教えてほしい…
という方もいらっしゃることでしょう。Amazonレビューの方でも、そういったご意見のレビューをされている方も見受けられました。
続いては、まさにそういった好奇心ある方のために紹介する本になります。もっと知りたい、読んでいくうちに興味が湧いてきたという方は、引き続き下記のタイトルもぜひ読んでみることをおすすめします。
中級者向け
続いては、もう少し本格的に脳科学を勉強してみたいという方のための本を紹介してい行きます。主なターゲット層としては、例えば以下のような場合を想定しています。
- 上記の本をすでに読破したけれど、物足りなから、もっと専門的なことも学んでみたいという方
- 高校や大学ではすでに、基礎的な生物学、生理学、解剖学等の講義を受けたり、自分なりに勉強を重ねてきたという方
- これから自分の専門を神経科学、心理学などに定めて、本格的に探求・研究を始めていくという方
- そうは言っても、いきなり分厚い専門書を読むには抵抗があり過ぎると感じる方
メカ屋のための脳科学入門、(続)メカ屋のための脳科学入門
専門書と一般向けの本の間に位置している印象で、両者の橋渡しにもなるような2冊です。
著者は、東大の大学院情報理工学系研究科、工学部の高橋宏和先生です。「メカ屋のための」という言葉のとおり、本書は工学系、中でも機械系の方々、メカ屋やエンジニアの方々にとっても理解できるような内容で書かれています。
しかし、神経科学を学んでいく上で、ぜひとも知っておきたい基礎的な内容も豊富に、かつわかりやすい切り口から書かれています。
この2冊を読むことで得られる知識について、簡単にまとめてみました。
- 神経細胞、グリア細胞などの大まかな構造や機能
- 大脳(大脳皮質、辺縁系、基底核、間脳、脳幹など)、小脳、脊髄といった各神経の構造や機能、投射の関係
- 中枢神経と感覚器、筋肉、骨格の情報伝導、それらによる知覚や運動の仕組み
- 神経科学の分野で利用されている実験手法、測定手法
- 脳の障害や精神疾患とのつながり
などなど、読みやすさもさることながら、専門的な知見も多く含まれているというのが特徴です。
下で紹介している専門書ほど分厚くもありませんし、2冊を合わせてもページ数は多すぎず、かといって情報は省かれすぎていると感じる部分も少なく、非常に読みやすく書かれているという印象を持てるはずです!
脳の事典
こちらは、全国の医学部医学科、保健学科をはじめ、様々な医療系の学部学科において、神経科学や解剖生理学の入門的な教科書としても指定されている一冊になります。
とにかく、カラフルで大きく見やすいイラストが載せられていて、全体を通して豊富にあるのが良いポイントです。
教科書として指定されているとか、「事典」というタイトルからは、結構堅いイメージがあるように思えるかもしれません。しかし逆に言えば、わかりやすい内容であるからこそ、全国の大学で教科書として採用されていて、濃い内容であるからこそ「事典」という名がふさわしいとも捉えられます。
脳の基本的な構造や機能などが、俯瞰的に学べるという点で、脳科学に興味がある方には最適の一冊と言えるでしょう。
専門書(学術書)
ここからいよいよ、専門書の紹介に入ります。ここから先は、かなり専門的な内容が多くなってきます。
- 神経科学を専攻したり、そうした分野の研究室に入ることで、本格的に学びたいという方
- 原著論文をある程度は読めるくらいまで、専門性を突き詰めたい方
神経科学にとどまらず、生命科学に関わる専門的な本といえば、個人的にはとにかく分厚くて、重厚感や敷居の高さに圧倒されそうになるという印象があります。
※読み始める前に意識しておくべきこと
ということでまずは、こうした専門書を読むにあたって、購入の前と読み始める前に意識しておいたほうが良いポイントについてご紹介したいと思います。
まず、下に上げる本を読み始める前に、以下の2点をおすすめしておきたいと思います。
- 神経科学の基礎の基礎の部分は、以下に紹介する専門書を読む前に、すでにある程度知っておくこと
- 上で紹介したような本を先に読むことで、大まかな全体像を知っておくこと
例えば、神経を構成する細胞の種類や構造、脳の大まかな分類、各脳部位の役割、ネットワークなど
そもそも、こうした本を読むくらいの意識ある方であれば、すでにこうした内容は知っている方もいるかもしれませんが、いかに紹介するような本を読む上では、必ず役に立つはずです。
分厚い本で学ぶとなると、敷居が高い印象がありますが、上で上げたような、比較的優しい本で最初に学んでおくというのは、意外と大事だと思います。
- 興味ある分野、トピックの内容から読む。
- 自分の勉強している内容、研究分野に近い部分など、必要性に応じて徐々に読みすすめる。
- 各章、チャプターの要旨を述べているところから読んでみる。
- 図を見たり、その説明だけを読んで、構造や仕組みなどを視覚的に理解できる部分から取り掛かってみる。
とにかく途中で挫折しないように、少しずつ目を通していきたいです。
かく言う私も、実は以下で紹介している本も、電子版としてクラウド上に保存する形で、いつでも閲覧できるように所持しています。大体、どんなトピックの内容が、どんな順序で並べられているかを抑えておくことで、いざというときに参照しやすくしています。
カンデル神経科学
間違いなく、神経科学の教科書(学術書)の中でも最も有名な一冊です。神経科学を専攻しているという学生であれば、一度は見聞きしたことがあるかもしれませんし、研究室に所属してある方にとっては、本棚に置いてあるかもしれません。
著者は、2000年にノーベル医学・生理賞を受賞したEric R. Kandel先生をはじめとした、分野でも著名な先生方ばかりです。
英語版と和訳版が出版されていますが、それぞれ「Principles of Neural Science」、「カンデル神経科学」と、タイトルは少し違っているものの、改訂版も出版されており、クオリティはもちろんどちらも高いです。
専門書にはありがちですが、鈍器になるくらい大判で分厚い本ですので、最初から順番に読もうというのは、日本語版であっても大変です。
スタンフォード神経生物学
カンデル神経科学に次いで、こちらも神経科学では大変有名な教科書です。
基本的に、神経科学を本格的に学ぶという方であれば、カンデル神経科学、スタンフォード神経生物学のどちらかを読んでいくことができれば、広範かつ深淵な背景知識を吸収できます。
両者とも、最新の研究を用いて明らかになってきた知見を取り入れて、現在でも数年に一度の改訂版が出されていますし、それぞれの知見は、各章の最後にある「Reference(参考文献)」の欄からチェックすることができます。
神経科学の面白さとは!?
最後に、個々までお読みいただいた方に対して、私が考えている「神経科学の面白さ」について、簡単にまとめて終わろうと思います。
- 間違いなく、今後の発展、ブレイクスルーが期待されている分野であるということ
- 自分の脳内で起きている現象について研究する分野でもあるから、意外と身近な存在にも思えること
- トップジャーナルにも投稿されやすい(主観)
- 機械学習、人工知能をはじめとした最先端の技術が大いに活用されており、神経科学+情報科学の相性が非常に良いこと(例:オミックス解析、ニューラルネットワークなど)
- だから、分野をまたがる複合的な研究も盛んで、多彩な専門性を磨いたり、活かしたりできること
以上が、個人的に思う神経科学の面白さです。「面白さ」っと謳っている以上は、個人の主観以外の何物でもないというのは確かにそうですが、それでも誰もが魅力を感じられる分野の一つだと確信しています。
どうか本記事が、皆さんが神経科学に対しての興味を高めるきっかけになっていれば幸いです。
最後までお読みいただいてありがとうございました。